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プロローグ
「ねえねえ! 聞いて聞いて! 私、見ちゃったの!」
教室の真ん中で女子が5人ほど集まりはしゃいでいる。きらびやかなその声はガヤガヤした教室の中でも頭一つ飛び抜けて高く、机の上でつっぷしている私の耳にも入った。
あー、うるさい。
「先輩に告白しちゃおっかな。オッケーだったらどうしよー」
全部聞こえてるっつーの。
授業の合間の貴重な休憩時間を、睡眠で有効活用したかったのに起こされてしまった。
「小さいおじさんを見つけた時さ、小さい体で階段を登ろうとしてたの。可愛かったー」
小さいおじさんとは、妖精みたいな中年オヤジのことだ。見た目はおじさんそのものなのだが、とても小さい。りんご2つ分ぐらいだ。
「私、遠くで見ながら応援しちゃったよ」
私なら迷わず取っ捕まえて尋問してやる。お前は誰なんだ?と。
「どうしよー。私、幸せになっちゃうかも!」
あほらし。
私の通う高校では『小さいおじさんを見つけたら幸せになれる』という都市伝説がある。でもそんなのは絶対にウソだ。
それが本当だとしたら、私はあのとき幸せになっていたはずなのだから。
◇◇◇
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