小さいおじさんをおいかけて

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 父との思い出は思いだそうとしてもあまりない。平日は仕事が忙しいのか、家に帰ってくるのは私が寝るころだった。休日も家にいることはほとんどない。金曜の夜になるとと音が聞こえ、気付くと家からいなくなっていた。そして日曜になるとフラッと戻ってくるのだ。  七歳のとき、ガサゴソの正体が気になって、一度、起きて父の所へ行ったことがある。 「触っちゃダメだ。これは大事なものなんだ」と一喝されて怖い思いをした。  そして、それが父との最後になった。それ以来、父と会っていない。  私は父があまり好きではなかった。  だから父との思い出の場所も避けていたのだが、小さいおじさんを追うため、何年かぶりにこの方角へと足を進めた。
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