小さいおじさんをおいかけて

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 私はベンチに座ったまま雲一つない夜空を眺めていた。  夜が明けるのか次第に明るくなってくる。  真っ暗だった空は青みを帯びてきて、やがて地平線が燃えるようなオレンジ色に変わる。そしてオレンジは夜の色を飲み込んで空全体に広がっていった。  山頂からは不揃いに建ち並ぶ家々や格子状に敷き詰められた田園が良く見える。私の生まれ育った町の風景だ。  そのずっとずっと向こうには、この山よりも何十倍も大きな山嶺が構えている。  山嶺の隙間から真ん丸の光が顔を出した。そのあまりにも強い光は、白よりも白く輝いている。  私は、直視するには眩しすぎる太陽を瞬きもせず見つめていた。  キラキラしていたから。  これは父の愛したものであり、母の愛したものなのかもしれない。
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