君は僕の一生の宝物

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世間は俺が結婚していることも子供がいることも知らない。 「お父さん」なんて呼ばせるなんてもってのほかとのことで芸名である「麻生さん」と呼ばせている。 ひまはみんなが「お父さん」と呼ぶように呼べないことをもしかしたら寂しく思っているかもしれない。 でも、それでもひまが呼ぶ「麻生さん」に俺は癒されるんだ。 「あ、そうだ!」 「ん?」 ひまが思い出したように、ソファーから立ち上がり部屋へと入っていく。 「どうしたんだろ」 「なにか見せたいものでもあるのかな?」 「麻生さん、これあげる!」 「お?なんだー?」 部屋から出てきたひまが1枚の厚紙を俺に渡してくる。 「お、これ俺?」 「うん!麻生さん!」 「おー、嬉しい。ありがとう」 どうやら幼稚園で絵をかいたのを持って来てくれたらしい。 「麻生さん、ごめんなさい」 「え?なんで謝るんだ?」 「お父さんの絵をかくことになって、麻生さん書いちゃったから」 「……ひま」 日頃から「お父さん」とは絶対に呼ぶなと育ってきたひまにとって「お父さん」の絵をかくことほど嫌なものはないはずだ。 それでも俺の絵をかいてくれたひまのことが愛おしくて、そのままひまのことを抱きしめる。 「いいんだよ。呼ぶなとは言ってるけど、お父さんって思うななんて言ってないんだから」
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