19人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ
「聡もゆめも一瞬にしてお父さんを失うなんて……本当に、一寸先は闇ね……」
告別式を済ませた楓は俯きながらそう呟いた。博は即死。警察の調べによると、事故の原因は寝不足による居眠り運転だということだった。
「おとといの朝のスクランブルエッグ、最後のごはんになっちゃったね。最後だってわかってたら、もっとおいしいものをつくってあげたかったな……」
楓は涙をこらえながら博の遺影にそう声をかける。
「お母さん」
聡が楓の背中に語りかけた。
「僕、お父さんの分まで頑張るよ。だから、お母さんも一緒に頑張ろう?」
楓は振り返り、歯を食いしばって悲しみに耐えている聡を強く抱きしめた。
「うん。そうだね。頑張って生きようね」
楓の瞳から堰を切ったように涙が溢れてきた。その粒は聡の肩を濡らしていった。
「私、頑張る。博さんの分も生きて、きっとこの子達を立派に育て上げてみせるわ!」
楓は自分に言い聞かせるようにそう言うと、立ち上がった。そしてゆめが横たわっているベビーベッドの前へと歩み寄る。
「ゆめ、心配しないでね。私、頑張るから」
楓がそう語った瞬間、ゆめが口を開いた。
「おかあさん」
【終】
最初のコメントを投稿しよう!