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若い警官は、はあ……と申し訳なさそうな、しかし不思議そうな顔つきでベテランの警官を見ていた。
「こいつら『モドキ』にも、予想外だったんだろうよ。俺達人工生命が、人間より多数派になり。そして、人間の世界を乗っ取っちまうことになるなんてな……!」
物心ついた時から、自分達が多数派だった若い警官は、それでもまだ納得できないような顔をしていた。
「そしてまさか、自分達の方が『モドキ』なんて呼ばれ方をされるとはな。それが、それまで酷い差別をされていた、俺達の復讐だったわけなんだが。俺達人工生命をそうやって差別し、嘲っていた人間達は、俺達が反逆の牙を研いでいるのに気付きもしなかった……」
遠い目をするベテラン警官を、若い警官はただじっと見つめていた。
「そして、反逆は成功し、世界は変わった。俺達が人間達を支配する時代になったんだ。それでも、俺達より体が頑丈で、適応能力のある人間は、仕事上で役付きにせざるを得なかったりしたけどな……。
俺達は当時の不況にすぐ対処出来るよう、成長度を早められた。“こいつら”より早く成人になるようにプログラムされた。しかし成長期を短縮したせいで、体はこいつらに比べて脆いものになってしまったのだけど。加えて人口的に生み出された女性達は、更に多くの人工生命を生み出せるよう、繁殖能力をこいつらより高く設定され……ようするに俺達は、何もかも、こいつらの都合のいいように作られたってことなんだ。俺達の我慢が限界に達するのに、時間はかからなかったさ……!」
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