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行き止まりにはならないでくれよと思いつつ、狭い路地を進んでいくと、上手い具合にまた広い道路が先に見えた。そして、道路に出たそばの信号で、一台のバイクが信号待ちをしていた。これだ! 俺はそのバイクに駆け寄り、いきなり話しかけられてビックリしているそいつに聞いた。
「お前は、どっちだ?」
そいつは最初、なんのことかわからない様子だったので、俺は更に問いかけた。
「俺は、『モドキ』だ。お前はどっちなんだ?」
それでようやく質問の意味が飲み込めたらしいその若い男は、ヘルメットを脱ぎ、「モ、モドキ? で、いったい俺に何の……」と言いかけたが、その言葉を言い終わる前に、俺の拳がそいつの顔を打ち砕いた。その返事でわかった、こいつも「ヤツら」だ。
若い男は俺の一撃で頬骨が砕けたらしく、「わあ、わああ!」と叫びながら道路をのたうちまわっていたが、それには目もくれず。俺はバイクにまたがると、彼女にヘルメットを渡した。
「さあ、後に乗って……!」
彼女は相変わらずキョトンとしていたが、しかしやがて、「うん!」と一言だけ言うと、ヘルメットを被り、バイクの後に飛び乗った。俺はアクセルを全開にして、深夜の町をひた走り始めた。
「気持ちいい……」
俺の背中で、彼女が独り言のように言った。
「そうだろう?」
俺は彼女に聞こえるよう、大声で叫んだ。
「こんな風を肌に感じるの、どれくらい振りだろう? 何ヶ月も、あの店に閉じ込められて暮らしていたから……」
俺はその言葉を聞き、また胸が痛んだ。これが俺達「モドキ」の現実なんだ。権利なんてもんはありゃしない。今までの俺の生活も、あたかもそれがあるかのように繕われていただけなんだ……!
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