モドキ

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 俺達「モドキ」は、「ヤツら」より効率がいい働きが出来、そしてヤツらよりも長時間働く事が出来る。くわえて、ヤツらにはない適応能力もある。だから、各企業の主だったポストは、少数派である俺達が占めていることが多い。  それにより仕事にあぶれた「ヤツら」は、政府の雀の涙のような補助金をもらって、細々と暮らしている。そう、こんな店にこうやって、入り浸っているヤツらのように。だから、こいつらの俺達に対する恨みは、相当なものなのだろう。俺達にしてみれば、少数派である自分達の存在意義を示すため、そして何より自分達の生活維持のため、必死にやっているに過ぎないのだが……。  普段会社にいる時も、誰も面と向かって言いはしないが、そういう空気はいつも感じている。なんでお前がここにいるんだ? そしてなぜ、そうやって偉そうに「俺達」に指示を送ったりしているんだ……? 日々背後から突き刺さってくるようなその重圧は、計り知れない。  どうせなら皆で、俺の事を罵ればいい。好きなだけ、日頃溜まった恨みつらみをぶつければいい! そう思って、俺はたぶんここへ来たのだろう。誰一人遠慮なく、俺を罵るであろうこの路地裏に。極端な事を言えば、この店こそが俺にとっての楽園だった。さあ、もっと言えよ。俺に好きなだけ、不満をブチまけろよ! ……俺はだんだん、自分の感覚がマヒしていくのがわかった。 「おまえらのその、俺達は違うんだって態度がムカつくんだよ!」 「そうだそうだ! いつもお高くとまりやがって! 自分達はエリートでござい、ってツラしやがってよ!」
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