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いまや初老の男も、ボックス席にいた男達も。一団となって俺を責め立てていた。おそらく知り合いでも友人でもないだろう彼らが、俺に対する、「モドキ」に対する怨みという一点で、一瞬にして団結したのだ。中年女はそれを聞いて、甲高い声でゲラゲラと笑っていた。俺の孤立感は頂点に達し……そして、俺は。その孤立感が、自分でも思いもしなかった形で現れるのを、止める事が出来なかった。
「くっ、くっ、くっ……」
俺の声を聞き、ヤツらの罵る声が止まった。あまりの一斉射撃に俺が耐え切れず、泣き出したのかと思ったのかもしれない。だが、それはまったく違っていた。
「くっ、くっ……くくくく。ははははは。わはははははは!」
俺はいつの間にか、大声で笑い始めていた。酒に酔ったせいではない。自分でもわからない。もしかしたら、気が違ったのかもしれない。とにかく俺は、自分を罵倒し続けるヤツらに囲まれた中で、狂ったように笑い始めた。
「てめえ、何がおかしいんだ!」
ボックス席に座っていた男の一人が、目を血走らせて俺の前に立ちはだかった。それでもなお、わはは、わはははは! と笑い続ける俺に、ヤツらの表情は見る見るうちに変わっていった。
「てめえ、ふざけやがって!」
男達も、かなりテンションが上がっていたのだろう。カウンターにあったビール瓶を掴むと、ばりーーん! とテーブルに叩き付け。そのギザギザになった断面を、笑い続ける俺の顔に突き出した。
「殺してやる……!」
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