要らぬ一言(side 須藤)

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渋々だけど、引き受けてしまったからには、完璧にこなすのが、俺の流儀。 彼女の仕様書とメールに記載されている観点を照らし合わせながら、指摘事項一覧に気になる点を記載していく。 書きながら、ため息が出た。 仕様書通りには作ってあるけど、立花の書いたソースは論理の無駄が多い上に、コーディング規約に則ってない箇所が散見する。 一言で言うと、分かり難くてバグりやすい。 実際、一箇所明らかにバグってる。 俺達の仕事でのバグは命取りだ。 大きな仕事を請け負っている場合、たった一箇所のバグで、数億円の損害が出る事だってある。 鬱陶しいと思われる気もするけど、言う事は言わなくては。 立花をチラリと見ると、ヤツは俺の確認が終わるのを今か今かと待ち構えていたようだ。 擦り寄ってきた。 ディスプレイに指摘事項一覧を表示させた上で、一個ずつ指摘の内容を説明してやる。 そして、さあ。 軽く気合い入れて、一気に言った。 「指摘事項一覧には書いてねぇけど。 もっとシンプルに書けよ。後、コーディング規約に則ってねぇ所が散見する。 コメントの誤記も多い。 ちゃんとセルフチェックしたか? この前沼田さんにも指摘されてたろ。 お前、雑過ぎんだよ」 そんなんだから、頬のニキビが治らないんだぜ って、余計な一言を口走りそうになって、慌てて口を噤んだけど。 時すでに遅し。 眼前には、魂の抜けたような虚ろな目をする立花の姿があった。 チーン……。
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