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「そんなこと。うちは単純に目立つからかな?身長があるからスポーツ得意そうっていわれるけど、本当は苦手なんだよね。でもこの身長はいかすべきでしょって思ったら演劇かなって」
「確かに。それに草野さんの声量と器用さもいかせるよね。騎士が戦うシーンだって草野さんだからこそかっこよく決まるんだと思う」
「それ本音でいってる?」
「いってるよ。今日は本音しかいわないから」
わたしの言葉にくすりと水川さんが笑う。
「やっぱり普段は本音も話さないニセ部長だったんだね」
「それは……否定しない。だってみんなに自分をよく見せたかったから」
「そのわりには空回りじゃない?」
「草野さんって前から思っていたけど、けっこう毒舌だよね」
「部長はいいたくなるキャラだから仕方ないよ」
「……それよくいわれる……いいたくなるキャラってなに?」
机に突っ伏してすねていると、「そういうとこだよ」と草野さんが笑いながらわたしの背中を叩いてくる。
「いいたくなる?かまいたくなるとか?」
「それもよくいわれる。もぅありがとう!」
水川さんの言葉にやけになりながらお礼をいうと、それまで一緒に笑っていた水川さんが真顔になる。
「あたしね……こんな声だからよくからかわれたし、いじめられていたの」
「えっ?そうなの」
「この声がいやで、恥ずかしくて……そんな自分が嫌いだった。そんな時にクラスでいつもひとりでいる大人しい女の子があたしに声をかけてくれたの。『水川さんの声はアニメの世界では貴重だよ』って。それで声優の仕事を知ったんだ。それから自分の世界が変わった気がした。だからあたしも誰かの希望になりたいって思ったの」
水川さんのかわいい見た目にぴったりなかわいらしい声のせいでいじめられていたなんて意外だった。水川さんの誰かに希望をもらってそれを返したいと思う気持ち、わたしにもわかる。
「なろう。誰かの希望に!」
「部長……熱くない?」
「ウザい……かな?」
「ウザい」といいながら水川さんが笑うから、わたしもつられて笑う。みんなそれぞれの想いを抱えて演劇部に集まってくれたと思うと、わたしも負けてられないという気持ちがわいてくる。
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