25人が本棚に入れています
本棚に追加
おばあちゃんが見守ってくれる視線だけで、きっと土田さんの不安な気持ちが少しは和らいでくれるんじゃないかなって期待もできるし、何より届けたい思いがあるなら、伝える方法があるなら、直接本人に届けたいよね。そのためならわたしの使える力をすべてそそいででも、きっと土田さんのおばあちゃんに繋げてみせる。
「そんなこと出来るかな?」
「出来るよ!きっとやってみせる」
「うちの部長は、アイス先輩にすら気負いしないで向かっていっちゃうんだから。そんな部長が出来るっていうんだから信じよう」
信じる……今、草野さんがわたしを信じるっていってくれた。うれしすぎてなんだかむずむずして頬が自然とゆるむ。
「任せていいよね、部長」
「うん。もちろんだよ。わたし達の舞台で土田さんのおばあちゃんを笑顔にしょう」
「ありがとう……」
「そうだ。ラストの少女のせりふの前に、土田さんの伝えたい思いをせりふにするってどうかな?」
台本をかばんから取り出し、ラストシーンのページを開くと、机の真ん中に置く。
「ここのシーンで少年はどんなに感情を集めてもひとりでは孤独だったって告白するでしょ?でも少女があなたにはわたし達がいるって返すせりふの後に土田さんの思いをせりふにしてみるってどうかな?」
なんだかこのラストシーンの少女と少年の関係が、土田さんとおばあちゃんに重なってしまった。それならおばあちゃんに自分の素直な気持ちを舞台上から伝えるのもいい考えなんじゃないかなって思った。
「普段は恥ずかしくていえないことも素直に言葉に出して伝えられると思うんだ。やっぱり気持ちは言葉にしないと伝わらないから……伝えよう」
演劇部のみんなに出会えたからわたしも気づくことができた。それならみんなにも伝えたい。わたしの感謝の気持ちも。
「みんなに出会えたからわたしも気づくことが出来た。これからはうれしいことも悲しいことも、楽しいこともつらいことも……なんでもみんなと一緒がいい。これからもよろしくお願いします」
立ち上がり頭を下げると、草野さんが横からわたしの背中をたたく。
最初のコメントを投稿しよう!