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「いたっ」
「こちらこそよろしくね。部長」
「うん」
「よろしくお願いします。部長」
「水川さん、よろしくお願いします」
「部長」
「土田さん」
「おばあちゃんのこと、よろしくお願いします。頼りにしてるよ。部長」
「土田さん……ありがとう。ねぇ円陣組んじゃう?」
「暑苦しい」
「ダメか」
さっきまでつらそうにうつ向いていた土田さんも笑顔になる。みんなが笑っている。わたしも声を出しながら笑う。演劇部がやっとひとつになれた気がした。
「おじゃまします」
和やかな雰囲気の中、突然の訪問者にみんなが驚きのあまり固まる。
「あれ?タイミング悪かった」
「最悪なタイミングですね」
「だからもうちょっとたってから入ろうっていったじゃない。今はやっと演劇部がひとつになったってひたるところでしょ。拓梅のせいで台無しじゃない」
にぎやかな声で入ってきたのは、生徒会の人達だった。杏也先輩にはあきれたように説教されて、汐里先輩にも演劇部の和やかな雰囲気を壊したと両側から責められて、拓梅先輩が真ん中でしゅんとしている。
「だっ大丈夫です。気にしないでください。それよりなにか演劇部に用事があったのでは?」
慌てて立ち上がり、拓梅先輩の元へフォローしながら駆け寄る。演劇部のみんなもいすから立ち上がり、状況を見守っていた。
「そうだ。みなさ~ん、生徒会から差し入れのアイスです」
顔を上げると、パッと明るい笑顔に変わって拓梅先輩が杏也先輩が持つ保冷バックを手でかざしている。アイスクリームが入った保冷バックを両手で持つ杏也先輩を見上げながら、『アイス先輩なんていわれている杏也先輩がアイスクリームを持っているなんて笑えないかも』なんてわたし以外もみんな思ったはず。しらけたような雰囲気にたえられなくなって「アイス?うれしいです」なんておおげさなほど喜んでいると、わたしの後ろでも演劇部のみんながアイスだと喜んでいる。
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