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わたしの名前が呼ばれて慌てて立ち上がる。どうして杏也先輩がわたしの名前を知っているんだろうと疑問に思って固まっていると、教室の外からじっと見たまま無言で立っている杏也先輩の視線が自然とわたしの足を動かして杏也先輩の元へゆっくりと近づいた。
「あの……」
「掃除当番ですか?」
「はい」
心を落ち着かせるように、ほうきを握る手に力がこもる。
「では終わったら生徒会室に来てください」
「生徒会……室」
生徒会室に呼び出されたわたしに教室がざわめきだす。
「必ず来てください」
そういい残すと、杏也先輩がきびすを返して帰っていく。やっぱりわたしがずっと杏也先輩を観察していたのがバレていたんだ。だから生徒会室に呼ばれたのかもしれない。背中が一気に冷えていく感覚に震えそうになる。わたしはまだいいわけも演劇部復活のために説得する言葉も考えていなかった。
「どうしょう……」
あせる気持ちと怒られるかもしれないという恐怖が混ざりあって心がざわざわと音を立てている。
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