11.空ノ音の先に夢がある

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部室の前につくと、深呼吸をしながらかぎを開けてなかに入る。なまぬるい風がわたしにまとわりつくから、冷房を入れながらよし!と気合いを入れる。どれくらいの人数が集まるかわからないから、多めに机をつけていると、演劇部のみんなが集まり始めた。 「おはよう、部長」 「おっ、おはよう」 「もしかして緊張してる?」 「してるよ。みんなはしないの?」 「緊張もあるけど、楽しみの方が勝っちゃう」 「そうだね。楽しみなドキドキもいいよね」 みんなで和やかに話していると、生徒会と学園祭実行委員の人が部室に入ってくる。 「お疲れさま。ミーティング始めよう」 拓梅(たくみ)先輩のテンション高めの声が部室の中に響き渡る。 「今日は、よろしくお願いします」 緊張ぎみにあいさつをするわたしに、いつもと変わらない笑顔で「よろしく」と拓梅先輩が返してくれるから、緊張が少し和らぐ。 演劇部が横並びに座り、向かいに生徒会と学園祭実行委員が座っているのに、なぜか阿左美(あざみ)先輩はわたしの横に座っている。杏也(きょうや)先輩が警戒しているのか、ムッとした顔で阿左美先輩を見ている。 「いやだな。今日の僕は学園祭実行委員ではなくて映像部の部長として来たんだよ。こっちに座ってもいいよね。副会長」 「そうですね。あなたには演劇部をたくさんフォローしていただきたいので、今日は映像部部長としてよろしくお願いしますね。阿左美先輩」 ふたりの殺気だつ雰囲気がピリピリと伝わってきて、思わず拓梅先輩に助けを求めるように見つめると、それを察してくれたのか突然立ち上がると、ふたりの間に入って慌てている。 「まだ他の部活の部長が来てないけど、始めちゃおぅ」 「そうですね」 杏也先輩は咳払いをしながらもムッとした顔を崩さないし、阿左美先輩はこの状況を楽しむように微笑んでいる。 「まずは映像部の部長から当日の撮影についての説明です。お願いします」 拓梅先輩に指名されて阿左美先輩が資料をめくりながら説明してくれる。
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