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「副会長からどうしてもとお願いされたので、映像部としてもぜひとも協力したいと思い、演劇部の舞台を土田さんのおばあちゃんに生配信することに決めました」
阿左美先輩の言葉に演劇部のみんなで顔を見合わせる。
「本当にありがとうございます」
土田さんのうれしそうな顔を見て、みんなの顔がほころぶ。本当によかった。
「撮影した映像は、後日希望の枚数を聞いてDVDに焼くから、副会長も欲しかったらいってくださいね」
「……そうですね。生徒会の保存用にいただくのもいいかもしれませんね」
「生徒会のね」
にやりと笑う阿左美先輩に杏也先輩がムッとして見ている。
「もう息苦しいな。次はハンドメイド部からでいい」
ピリついた空気をぬぐうように汐里先輩が立ち上がる。
「どうぞ。お願いします」
拓梅先輩が助かったと小声でいうから、汐里先輩があきれながらも、一度部室を出ると、他のハンドメイド部の人も駆けつけてきて、トルソーを部室に運んでくる。そこには、明日わたし達が着る衣装がかけられていた。
「うわ~すごい。かわいい」
それぞれが着る衣装の前に立ってみんなですみずみまで衣装を見つめる。
「こだわりすぎてギリギリになっちゃったけど、わたしの自信作だから。当日は美容部にもメイクのお願いをしたから楽しみにしていてね」
「ありがとうございます。後で着替えて動きの確認をしないと」
「さすが汐里だね。今回もすごいよ。早く着て見せてよ」
「なにいってんの?」
拓梅先輩の言葉にそれまで笑顔だった汐里先輩が怒ったような怖い顔に変わる。ただならない空気を感じたのか、拓梅先輩が何度も謝っている。
「わたしの作品をいち早く拝めると思わないでね。明日まで待ってなさい」
「はーい」
素直に返事をしながら拓梅先輩がしゅんとしている。
「あんたもよ、杏也」
「わっ、私ですか?」
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