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部活掲示板の前に置かれたチラシに、美術部が物語をイメージして描いてくれた演劇部のチラシも加わった。チラシの束から1部取って見つめると、また元の場所に戻した。例え体育館の客席は全員、総合アクター部が目当てだとしても、わたし達は自分たちが持てる力をすべて出しきって舞台を楽しもう。そう思った。
いよいよ学園祭最終日が開場する。続々と人が押し寄せて、みんな一心不乱に体育館を目指している。事故が起きないようにと、生徒会と学園祭実行委員、先生までかり出されて列形成をしながら人の波を整備していた。
「わたし達も今のうちにチラシを配っちゃおう」
「そうだね」
舞台の準備前に、少しでも演劇部の舞台をアピールするために、みんなでチラシ配りにきた。
「美術部のこの絵ならきっとみんなもらってくれるよね」
「部長の未確認生物の絵でももらってくれるかもよ」
「もぅ~美術部にお願いして絶対にこの絵のポスターにかえる」
手分けしてチラシを配っていると、案外みんなチラシをもらってくれるからすぐにチラシがなくなる。今から体育館に行ってもいつ入れるかわからない不安からチラシを受け取りながらわたし達に聞いてくる人が多かったからかもしれない。
「戻りました」
部室へ戻ると、すでに演劇部の他のみんなは戻っていて、土田さんがテレビ電話をしている。
「あっ、待ってね。部長が戻ってきた」
土田さんに手招きされてスマホをのぞくと、そこにはおばあちゃんが映っていた。
『あなたが部長さん?いつもお世話になっています』
「もしかして土田さんのおばあちゃんですか?」
「そう。わたしのおばあちゃん。みんなにあいさつしたいっていうから」
「はっ、初めまして。演劇部部長の鈴音花澄と申します。えっと、いつもお世話になっています」
「テンパりすぎでしょ」
「あいさつが固くない?」
みんなにツッコミを入れられていると、土田さんのおばあちゃんが笑い声をあげる。
『本当にいい友達に恵まれたわね。今日の朝だって、ほら誰だっけ?かっこいい双子の子達』
「那砂拓梅先輩と那砂杏也先輩でしょ」
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