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「杏也先輩。今日の朝、土田さんのおばあちゃんの所へいってくれたんですね。ありがとうございます」
「とても楽しみにしていましたよ。私達もしっかりと配信をサポートします」
「ありがとうございます」
じっと杏也先輩を見つめたままのわたしを見て、杏也先輩がふっと笑う。
「いつも以上にかわいいですよ」
「ありがとう……ございます」
なんでわたしが欲しい言葉を杏也先輩はわかってくれるのかな?へらっとゆるみそうになる顔をごまかすようにうつ向いた。
「本当にあなたはわかりやすい人ですね」
「杏也先輩が鋭いだけです。いつもわたしが欲しい言葉をくれるから……これでもドキドキして心臓が持たなくなっちゃうんですからね。悔しいから今日こそは杏也先輩をドキドキさせてみせます」
宣戦布告のような、ある意味告白じみた言葉にも聞こえてしまいそうなことを発してしまったようなと、今さら気づいて顔の熱があがる。恥ずかしい……杏也先輩の顔が見れない。
「そうですか。楽しみにしています。私をドキドキさせてくださいね」
ここでも余裕たっぷりな杏也先輩の言葉がやっぱり悔しい。
舞台そでに着くころには、演劇部の前に演奏を披露している吹奏楽部の最後の曲が始まっていた。メインの楽器を演奏している人が立ち上がり、踊りながら演奏をしている。舞台下では、チアの衣装を着た人が旗を振りながら踊っている。観客も手拍子をしながら盛り上がっているから、わたしの目も吹奏楽部のパフォーマンスにくぎづけになる。吹奏楽部の演奏が終わって、幕がおりても拍手がなりやむことはなかった。
吹奏楽部の人がハイタッチをしながら舞台そでに戻ってくる。その中から凪彩ちゃんを見つけて駆け寄った。
「凪彩ちゃん。最後の曲しか聴けなかったけどすごかった」
「ありがとう。花澄かわいい。このワンピース似合うじゃん」
「ありがとう。汐里先輩のデザインなんだよ」
「やっぱり汐里先輩って完ぺきだよね。きれいでなんでも出来て。なによりあの那砂兄弟の幼なじみってところがポイント高い」
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