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暗闇に包まれたような舞台上に土田さんと一緒に歩いていくと、わたしにだけスポットライトが当たる。わたしの動きに合わせて何色にも光が色を変えていくと、舞台上が全体的に明るくなる。いよいよわたしの、少女のラストのせりふが始まる。
「あなたの叶えたい夢を聞かせて」
妖精の手のひらから少女の手のひらへ夢のかけらが紡がれる。光輝く夢のかけらによって少女は夢の持つ意味をそこで初めて知る。自分の中に眠っていた少女の夢が目覚めたとき、想いがあふれだした。
「わたしの夢は……言葉の持つ力でみんなを笑顔にしたい。言葉は傷つけるための武器じゃない。自分にとっては何気ない言葉だったとしても、その言葉にうれしくなったり、救われる人だっている。でも悲しいことにその反対もある。深く傷つけられた心が悲鳴をあげるの……自分の知らないうちに。それは見てみぬふりをすることでしか自分を守れないから目と一緒に心まで閉じちゃうの。でも本当は心はつらい、助けてってずっと悲鳴をあげているの。誰にも、自分にすら気づかれないまま」
どうか……どうかわたしのこの想いを伝えて。ひとりで傷を抱えたまま助けを求めることさえあきらめたように笑うあなたに……。
「どうか言葉を発する前に一度よく考えて……自分が聞きたくないほどつらくて悲しい言葉を他人にも簡単にはいえないはずだから。後に残るのは後悔だけ。その後悔はやがて自分の傷に変わっていくから。自分の心まで傷つく時がきっとくるから」
それならわたしはこう願いたい。
「傷つけ合うくらいならうれしい、楽しいのためにわたしは言葉を使いたい。誰かの笑顔が見れたならわたしもうれしくなるし、ぽかぽかと胸があたたかくなる。だから言葉は自分の気持ちを、想いを伝えることができる特別な魔法なんだから。わたしは大切な人の笑顔を守るために言葉があるって思いたい。だからわたしは言葉の持つ力でみんなが笑顔になりますようにって願いたい」
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