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「でも杏也先輩の正義に救われる人もいます。それにみんなが見てみぬふりをすることも受け止めてくれる、正論をぶつけ正してくれる。それが杏也先輩だとわたしは思います。でもそのせいでいっぱい傷つけられる杏也先輩をわたしはやっぱり心配しちゃいます」
「そうですね。私も案外傷ついていたのかもしれません。でもつらいって思わないように自分の傷は見てみぬふりをしていたのかもしれません。あなたに心配させないようにこれからは気を付けます」
よかった。誰かの声や意見を否定しないで、受け取った言葉を自分なりに考え答え導く。そんな杏也先輩だからこれからはきっと誰かのためにだけじゃなくて、自分のためにもって思ってくれるかもしれないから安心したな。でもだからこそそんな杏也先輩の隣にずっといたいのに……。
「今年の学園祭も無事に終わりそうですね。もうすぐで後夜祭が始まりますよ。行かないんですか?」
「……」
杏也先輩は打ち上げ花火を誰と観たいんだろう……答えはわかってる。でもせめて今だけは……わたしのそばにいて。
「来年は高校生活最後の学園祭だから来年こそは学園祭というものをまんきつしたいですね」
「そうですね……周りのことは考えないで杏也先輩なりに楽しんでください。まんきつできたらいいですね」
本当は「わたしも一緒に」といいたい言葉を飲みこみながら返すのが精一杯だった。もしかしたら汐里先輩とふたりでなんて無理かもしれないけど、杏也先輩に楽しい思い出ができたら……いいよね。いいんだよね……わたし。
「あなたは鈍い人ですね」
ふっと杏也先輩が笑うから顔を見上げる。あきれたような顔でわたしを見ているのかと思ったらやさしい顔で微笑んでいるから心臓がどきりと音をたてた。
「私はあなたと一緒にといいたかったのですが、伝わりませんでしたか?」
「つっ……伝わりませんでした!確かにわたしといるとどんなことやらかすんだろうってハラハラドキドキがあるかもしれません。でも杏也先輩にとって貴重な、最後の学園祭をわたしがなにもやらかさないようにって監視するために使っちゃダメですよ」
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