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「知っていますよ。早く入ってください」
「しっ、失礼します」
さらに深く頭を下げてから緊張のせいでぎこちない歩き方になりながらも生徒会室へ入る。
「こんにちは。どうしたの?」
「こっ……こんにち、は」
拓梅先輩が大きな窓から射しこむ陽を背に浴びながら、会長の席から立ち上がって不思議そうにわたしを見ている。
「犯人はこの人ですよ」
「えっ?この子が!?」
犯人なんて……やっぱりふたりを観察していたのがバレていたんだ。でもどうしてわたしだってわかったんだろう?
あせるわたしを拓梅先輩が信じられないとばかりにまじまじと見てくる。その視線から逃げるようにうつ向く。
「とりあえず座ってください」
「はい」
杏也先輩がいすをひいてくれたから長机の前に座る。わたしと向き合う形で杏也先輩がわたしの向かいの席に座ると、机にひじをつきながら指をくんでいる。
「さて答えてもらいましょうか」
まるでこれから取り調べが始まるような空気にかたずをのむ。さっさと白状して謝ってどんな罰も受けようなんて空気がすでに漂っている。
眉根を寄せて難しい顔をしている杏也先輩とは反対に興味津々というように目を輝かせながら拓梅先輩が杏也先輩の隣に座る。
「なぜ隣に座るんですか」
「だってオレだって見守りたいもん」
「じゃまなのでとっとと自分の席に戻ってください。会長」
「きょーは相変わらずいじわるだな。いいじゃん!オレは会長さまだよ」
胸をはってドヤ顔をしている拓梅先輩を見て杏也先輩が大きなため息をついておでこに手を当てている。
「わかりましたよ」
杏也先輩が折れたことに驚いていると、拓梅先輩をにらみつけるように杏也先輩が目を細めた。
「ただし、口は閉じて。一言もしゃべらないで!わかりましたか」
「空気は吸っていいの?」
「子供ですか、あなたは……空気は吸ってもいいけどしゃべらないでください。いいですね!」
念を押すように杏也先輩がさらに言葉を重ねて目を細めている。
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