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「わかった……あっ!しゃべっちゃった」
「あなたは……話がすすまないから放っておきますよ」
拓梅先輩が口元を押さえながら首を大きく何度もたてに振っている。兄弟のやりとりを見ていると本当は仲がいいんだなって微笑ましい気持ちになって少しほっこりしちゃったけど、これからわたしは杏也先輩から取り調べを受けるんだったと思い返すと急にずっしりと心が重くなる。
「ではあなたにお聞きします」
咳払いをしてわたしをじっと見つめている杏也先輩の視線が、わたしを射抜く。それはわたしの心の中をさぐろうとしているようでだんだんと心臓の音がはやくなっていくのを感じた。
「あなたは私と会長をかぎまわっていましたね」
「……はい」
認めると拓梅先輩が大きな目をさらに大きくして目を見開いた。杏也先輩は表情を変えないまま目を細めてじっとわたしを見ている。
「意外とあっさりと認めるんですね。それで、だれに頼まれたんです」
「頼まれた?頼まれてはいません」
「それじゃあなたが!?」
急に大声を出す杏也先輩と勢いよく立ち上がる拓梅先輩に驚いて肩がビクッと動く。
「本当にすみませんでした」
深々と頭を下げて謝るけど、静まり返る重たい空気がようしゃなくわたしを責め立てる。
「あなたとは、意外でしたね。なぜですか?そんなに私が副会長なのが気に入らないんですか」
「きょーはみんなのために頑張っているんだよ。確かに怖いし厳しいし、口うるさいけど」
「文句ですか?」
「違うよ!みんなのことも学校のこともきょーはちゃんと考えられる人だよ。だってオレの自慢の弟なんだから」
「よくも恥ずかし気もなくいえますね」
「照れてる?」
「照れてませんよ」
なんだかおかしい?会話がかみあっていない気がする。口元を手の甲でおさえて顔を赤くする杏也先輩とうれしそうに杏也先輩のいいところを本人に伝えている拓梅先輩をじっと見る。
「あの……杏也先輩が副会長なのが気に入らないとは?」
恐る恐る尋ねると、「はっ?」と冷たい視線を向けながら杏也先輩が口を開く。
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