2.ある疑惑と復活の条件

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「あなたがいるとややっこしくなります。自分の席に座っておとなしくしていてください」 「はーい」 杏也(きょうや)先輩の言葉に素直にしたがって拓梅(たくみ)先輩が立ち上がると、会長の席に戻ってにこにことこちらを見ている。 「本題に戻りましょう。見たところ兄さんのファンではないようですね」 杏也先輩のストレートな言葉に、はいともいいえともいえず固まる。 「答えづらいですね。では質問を変えます。私たちをつけていたのはなぜですか?」 「それは……目的のためにはまずおふたりの性格を知る必要があると思ったからです」 「目的とは?」 「演劇部を復活させたいんです」 「演劇部ですか」 なにかを考えているように杏也先輩が押し黙る。会長の席では「演劇部か」とうれしそうに拓梅先輩がつぶやく。 「しかし先輩方が卒業してしまい、部員がいなくなったので演劇部はすでに廃部が決定しています」 「そんな……」 「演劇をやりたいのなら総合アクター部に入ればいいじゃないですか。ただしアクター部とボイスアクター部が統合して総合アクター部に変わったことで入部オーディションを通過するのはさらに狭き門になっていますが」 「なぜアクター部とボイスアクター部は一緒になったんですか?」 「今や俳優も声優もマルチに活躍する時代です。ですからそれぞれの強みを共有するために統合することになりました」 「うちの学園から有名人が多数でているんだよ。すごいよね」 実際部活紹介でもいちばん盛り上がっていたし、入部希望者が殺到すると凪彩(なぎさ)ちゃんもいっていた。だから入部オーディションをするけど、受かるのはほんの一握りともいわれている。 「あなたが総合アクター部に入りたくても今年の入部オーディションは厳しいものになるかもしれませんね」 「わたしは……演劇部がいいです」 「間違いなく無理でしょうね。諦めてください」 あっさりと否定されてバラバラと頭の中でなにかが崩れるような音が響いていく。 「それじゃ今年の学園祭で『空ノ音(そらのね)の先に夢がある』は上演されないんですか?」 「知っているんですか?」 「わたしがこの学園に入りたいと思ったきっかけのお話ですから」
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