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「演劇部として認めてほしいのなら生徒会から条件を提示します」
生徒会からの条件という言葉に緊張が走ってかたずをのむ。
「部活動として認められるのは部員が5人以上です。ですからあなたを入れて5人、部員を集めること」
去年の学園祭で上演された舞台を思いだす。配役は4人だった。だからもしもの代役を合わせても5人いれば上演は可能だ。
「そしていちばん大事な条件です。学園祭で『空ノ音の先に夢がある』を上演して成功させること」
「てことは、学園祭で上演していいんですね?」
暗闇の深くまで落ちかけたわたしに、杏也先輩が光へ向かう道筋をつくってくれたみたいで、希望という灯りが胸を明るく温かく照らしてくれたみたいだ。
「あなたはわかっているんですか?喜ぶ要素がどこにもありませんよ」
「どうしてですか?だって生徒会が演劇部(仮)を認めてくれただけじゃなくて、学園祭の上演も許可してくれたことになるんですよ。うれしいに決まってます」
「そうだよね。よかったね。花澄ちゃん」
「拓梅先輩。ありがとうございます」
「早速まりねぇにも演劇部(仮)の報告しないと」
わたしと拓梅先輩が舞い上がる横で杏也先輩が豪快にため息をつく。
「あなた達はお気楽でうらやましいくらいです。なぜ現実を受け止められないのですか」
「それどういう意味だよ」
「言葉にしないとわかりませんか」
「わからないよ」
わたしも拓梅先輩に同意するようにうなずく。
「いいですか、あなた達にもわかりやすく説明すると私はどうせ出来るはずないと無理難題をつきつけたんですよ」
「そんなに難しいことかな?」
「難しいですよ」
「どこが?」
わたしもなにが難しいのかかわからないから拓梅先輩の言葉に同意するように再びうなずいた。
「ここまでとは……」
あきれたようにため息をついて額をおさえると、杏也先輩がうなだれながら何度目かのため息をもらす。
「予言しましょう。あなたは演劇部を作れません」
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