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「本当に……変わった人ですね」
「きょーは本当にいじわるだよね。違うな。不器用過ぎてオレは心配になるなぁ」
「なんのことですか?」
「きょーが本当はやさしくてかわいいやつだってオレは知ってるよってこと」
「なんですか、急に」
「かわいいやつだな」
「かっからかわないでください」
「あの子がどこまで出来るか心配だな」
「私たちは見守ることしかできませんよ」
「きょーがいれば大丈夫だよね」
「なんのことですか?」
「きょーはあの子を絶対に放っておかないって話だよ」
そんな会話を那砂先輩たちがしていたなんて知らないわたしは、廊下を歩きながらもやもやと積もっていく感情をぬぐいすてるように歩く足を速めていく。
「杏也先輩ってみんながいうように怖いし冷たいよ!さすがアイス先輩」
でも言葉はキツいけどいっている言葉に説得力があるし、正論をいわれている気持ちになる。だから悔しくてこんなにももやもやが積もっていくんだと思ってしまう。
「それでも言葉がストレート過ぎるからもっとやさしく……」
いってくれたらわたしはうれしいのかな?そんなことない気がする。拓梅先輩みたいに、にこにこと笑ってやさしい言葉をかけてくれる杏也先輩なんて想像つかないから、やっぱり杏也先輩はあの感じがいいのかも。それに副会長の座から引きずりおろそうとしている人がいるっていっていたし、敵が多いのかな?だとしたら甘い顔なんてできないよね。
「そうか、少しでも甘い顔を見せたらきっと足元をすくわれる。だから常に緊張感を持っているのかも。杏也先輩の立場って実は大変なのかも」
杏也先輩にとって言葉や行動は自分を守るためのたてなんだ。そんなことを杏也先輩から感じた。柔らかな顔の杏也先輩を思いだす。きっとこっちが本当の杏也先輩なんだ。そう思うともやもやとした気持ちがはれていくけど、同時に同情にもにた感情がわいてくる。
それでもわたしのやることは演劇部の復活。杏也先輩を見返すことに変わりはないからまずは部員集めだ。どうしたら演劇部に興味を持ってもらえるか、家に帰って作戦をねらないと。
期待と不安が混じり合う気持ちを抱えながら目標に向かって一歩踏み出す。
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