3.困らせたいワケじゃない

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「なに隠してんの?」 「なんでもないよ。それより吹奏楽部は?」 「そうだ。早く戻らないと……」 わたしに近づいてくる足を止めて凪彩(なぎさ)ちゃんがきびすを返すからホッとする。 「って、いうと思った」 「あっ!」 伏せられたポスターがあっさりと凪彩ちゃんの手によってうばわれた。 「演劇部の部員募集と……なにこの未確認生物のような絵は?」 「妖精だよ。そんなに驚かれると恥ずかしいから笑ってくれたほうがいいよ」 恥ずかしさのあまり机に突っ伏してふくれていると、そんなわたしにあきれた声が降ってくる。 「いやいや、笑えないよ。だって怖いもん」 「めっ、目立つからいいもん」 凪彩ちゃんの手からポスターを取ると、いすから立ち上がる。 「それもそう、だね。部員集め頑張って」 「素直にありがとうっていえないじゃん」 気まずい空気を察してか「そうだ。早く戻らないと」といいながら逃げるように凪彩ちゃんが教室を出ていく。頑張って書いたけどやっぱり変かな?と心配になりながらもわたしも教室を後にした。 部活掲示板にポスターを貼るには、生徒会の許可が必要になる。生徒会が掲示物の内容を確認して許可印を押したものだけが掲示を認められる。だから未確認生物といわれたポスターを握りしめながら生徒会室へと向かう。 確かに下手なのは認めるけど未確認生物なんて……もしもこのポスターを杏也(きょうや)先輩が見たらあきれるかな? 「『なんですかこのポスターは。こんなクオリティーのものをよく貼ろうと思いましたね』なんていわれそう」 そう考えるとちゅうちょしてなかなか生徒会室の扉をノックできない。やっぱり文字だけにして書き直そうかな?それがいいよね。ときびすを返すと、わたしの後ろに立っていた杏也先輩と目が合う。 「びっ、びっくりした」 「あなたはこんなところでなにをしているんですか?私に気づかずに慌てた顔したり悩んだり。忙しい人ですね」 すでにあきれられてため息をつかれてる。やっぱり出直した方がいいかも。後ろにポスターを隠して首を振る。 「なっ、なんでも……しっ、失礼します」 その場をすぐに立ち去りたくて駆け出そうとするわたしを杏也先輩が呼び止める。 「ちょうどよかった。中に入ってください」 生徒会室の扉を開けると、わたしの返事を待たずに杏也先輩が中へ入っていく。
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