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「ちょっ、ちょっと待ってください」
慌てて生徒会室に入ると、にこにこと笑う拓梅先輩が出迎えてくれる。
「あれ?花澄ちゃんこんにちは。どうしたの?もしかして早速相談にきてくれたの?」
「あっ、あの……こっ、こんにちは。拓梅先輩……」
拓梅先輩って他人との距離感がおかしいのかもしれない。顔が近すぎてあまりの恥ずかしさに顔を背けて後ずさりしてしまう。
「あなたはどうして誰にでも懐くんですか」
「えっ?どういう意味?」
「あなたの距離感はおかしいですよ。彼女が困っています」
「そうなの?」
しゅんとした顔でわたしに聞いてくる拓梅先輩になにも答えられなくて慌てていると、豪快なため息が聞こえてくる。
「私が、彼女に用事があるんですよ。あなたは黙って座っていてください」
「わかったよ」
ふてくされたように自分の席につくと、頬杖をつきながら杏也先輩を怒った顔で見ている。
「いつものことなので放っておきましよう」
じっと見てくる拓梅先輩の視線を無視するように鍵倉庫から鍵を出すと、わたしに差し出してくれる。
「その鍵は?」
「生徒会の倉庫になっていた教室の鍵です。使わなくなったので演劇部(仮)の部室として使ってください」
「部室がもらえるんですか。ありがとうございます」
まるで大切な宝物をもらったみたいに、慎重に鍵を受け取る。手のひらにのる鍵をじっと見つめていると、ふっと杏也先輩が笑った。
「私は倉庫になっている教室といったんですよ。意味わかりますか?」
「もしかして学校の怪談系ですか?」
「あなたは子供ですか」
「もしかしたらトイレの花子さんがいるかもよ」
「えっ!?この鍵ってトイレの鍵なんですか?部室がトイレって」
「なんだか楽しそうだね」
わたしと拓梅先輩の会話を聞いてあきれたように杏也先輩がため息をつく。
「そんなワケないでしょ。ふたりも子供がいるとツッコむのも疲れますね」
げんなりというように杏也先輩が頭を抱えている。
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