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「これじゃ生徒会がいらなくなったものを置くためのごみ捨て場じゃない!」
だまされたという気持ちとそれでも片付ければ立派な部室として使えるんだからいいじゃないという気持ちがごちゃ混ぜになっていく。
「とにかく始めないと終わらないもんね」
あらかじめ持参した体操着に着替えて掃除を始める。
「絶対に今日中に終わらせる」
気合いを入れて掃除に取りかかるものの、大きなゴミばかりでひとりでは持ち上げられないものばかりだった。それでもなんとか教室の半分くらいはスペースができた。
窓の外は真っ暗で、それまで聞こえてきた運動部の声もいつの間にかやんで、しんと静まり返る。
「どうしょう……帰らないと」
電気がついているのに静まり返る教室の中はやっぱり不気味だ。慌てて制服に着替える。
「別に……拓梅先輩と花子さんの話したからって怖いワケじゃないし……」
わたしが呟いたのと同時に教室の扉が勢いよく開くから思わず悲鳴を上げる。
「きゃ~~~っ!」
「なんですか急に。大声を出さないでください。びっくりするじゃないですか」
そこには口元を手の甲でおさえながらわたしに冷めた視線を送る杏也先輩が立っていた。
「杏也先輩?驚かさないでくださいよ」
「それは私のせりふですよ」
「まだ学校にいたんですか?」
「それも私のせりふですよ。もう遅いから早く帰ってください」
「杏也先輩はまだ学校にいるんですか?」
「生徒が全員下校したら帰りますよ」
朝は身だしなみ月間だから誰よりも早く登校してそうなのに、帰りは誰よりも遅いなんて。生徒会の人は大変だな。特に杏也先輩への負担が大きい気がする。なのに副会長の座から引きずりおろそうとする人がいるなんて……代わりに杏也先輩の仕事をかわってみればいいよ。そしたら杏也先輩の存在がいかに重要で大切かきっとわかる。
そんなことを思ってしまった自分にドキリとして慌てて帰り支度をする。
「わたしが帰らないと杏也先輩が帰れないですよね。早く帰ります」
「そうしてください」
教室の中まで入ってきて辺りを見回している杏也先輩の横を小走りで通りすぎると、後ろから杏也先輩がわたしに話しかけてくる。
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