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「演技がしたいならアクター部かボイスアクター部に入ったら」
「演技がしたいワケじゃなくて、演劇部に代々伝わる演目でどうしても主役がやりたいの」
「いつも自分の主張しないような花澄が珍しいね」
凪彩ちゃんのいう通りだ。いつも凪彩ちゃんにくっついて決して自分からなにかしたり、発言したりしない。みんながすることにただ合わせながら無難に学校生活を送っていたから、だれかに自分の主張をいったことがない。そんなわたしだけど、今でも演劇部の人たちが演じていたお話はずっと心の中に残っている。わたしのやりたいことを見つけてくれた大切なお話だからわたしもだれかの夢のお手伝いをしたい。憧れは日に日に積もるばかりだったのに、演劇部がないなんて。
「とりあえず部活紹介が始まっちゃうから体育館に移動しないと」
「そうだね」
ひとつため息をつくと、体育館へと続く長い廊下を歩く。
「部活紹介が始まるから早く移動してね」
「クラスごとに並んで座ってください」
体育館の入り口に生徒を誘導しているふたりの男子生徒が新入生に声をかけていた。
「あれが噂の那砂兄弟だね」
「那砂兄弟?」
「もしかして知らないの」
「う、ん」
那砂兄弟を知らない人がいるなんてといいながら凪彩ちゃんが呆れたように笑っている。
「うちらの1こ上の2年生で生徒会の会長、副会長で双子の兄弟なんだよ」
「兄弟で生徒会の会長、副会長なんてすごいね」
生徒主体の学園の生徒会ということは実質生徒の中のトップにいる人たちだ。
「にこにこ笑いながら手を振っているのがお兄さんで会長の拓梅先輩。明るくて親しみやすいから女子にモテるんだよ。だからアイドル先輩っていわれてる」
確かに拓梅先輩の横を通る女子が悲鳴をあげながら騒いでいる。親しみやすい笑顔にわたしまでドキドキとしてしまう。だからモテるのもわかるかも。
「反対に無表情でたんたんと仕事をこなしているのが弟で副会長の杏也先輩。同じ双子なのに杏也先輩の場合は真面目だしとっつきにくいしよくいえばクールで悪くいえば冷たいからアイス先輩っていわれてるんだよね。わたしも怖そうだからちょっと苦手」
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