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4.総合アクター部、入部オーディション
「なにも起きなくてよかったよ」
「そうだね」
何事も起きなかったことがつまらないとばかりに時を止めた冷たい空間がみるみると活気を取り戻していく。なのにわたしだけがその空間から切り離されたように時を止めたままでいた。
「なにしてんの、いくよ」
「うん」
凪彩ちゃんの後ろを追うように歩いていると、足を止めるからわたしも続くように足を止める。
「このポスター貼ったの」
部活掲示板に貼られた演劇部の部員募集のポスターを見つけて凪彩ちゃんが豪快に笑う。
「違うよ……わたしは貼ってない」
「どういうこと?やっぱりこの絵ウケるね」
わたしの横で笑う凪彩ちゃんよりもポスターに書かれた文字が気になって手を伸ばす。わたしの目標は演劇部の復活。それと演劇部を作れないと予言した杏也先輩を見返すことだった。自分を見失いかけていたのかも。
「絶対に演劇部を復活させるんだから!」
「急にどうした?」
「自分に振り回されたりしないんだから」
気合いを入れ直してまずは部室の掃除をして使えるようにすること。後は部員の勧誘かな?でもどうやって部員を集めればいいのかな?腕組をしながら考えていると、突然放送が流れた。
『こんにちは。総合アクター部です。入部オーディションがいよいよ今週末に迫っています。1次審査は演技、2次審査は歌とダンス。最終審査まで進んだ人は自己アピールをもってオーディションが終了します。みなさんの参加、お待ちしています』
「総合アクター部に入部したい人はたくさんいるからちょっとしたイベントだよね」
「放送を使うっていう手もあるんだね」
「総合アクター部は特別でしょ」
「そうなの?」
「そうじゃなかったら生徒会が放送を許可するはずないもん」
部活動のすべての活動は生徒会の許可が必要だけど、やっぱり総合アクター部への期待が大きい分、特別扱いされて当たり前だよね。もしもわたしが放送で部員を勧誘したいっていっても許可がおりないのかも。
「特別か……」
今のわたしに出来る最善の方法はやっぱりひとつしかないかな?許可をもらいに生徒会に行かないといけないけど、杏也先輩にあんな態度をとっちゃったから気まずいな。
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