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放課後になると、足が自然と2年A組の前に止まる。杏也先輩のクラスだ。近くでは見れないからなんとなく遠目で教室の中をのぞくと、杏也先輩は掃除当番みたいで黙々と掃除をしている。まだ教室にいるということは……隣にある2年B組の中をのぞくと、拓梅先輩は見当たらない。先に生徒会室にいるならチャンスかも!ってこれじゃ最初の頃の那砂先輩たちを観察していた時と同じことしているみたい。
そんな自分にあきれてため息をついていると、複数の視線が痛いほどわたしを刺していることに気づく。杏也先輩を悩ます問題児もしくは拓梅先輩に近づくために杏也先輩を利用しているなんて噂されているわたしが2年生の教室がある階にいたら目立つよね。逃げるように2年生の階を後にして生徒会室へ向かった。
「拓梅先輩がいますように」と、心の中で唱えながら扉をノックした。
「失礼します」
「あっ。花澄ちゃん」
「拓梅先輩、こんにちは」
「こんにちは。どうしたの?きょーならまだいないよ」
笑顔で迎えてくれた拓梅先輩にホッとしながらもわたしが杏也先輩に会いに来たと思われているみたいで慌てて手を振った。
「違います。拓梅先輩に用事が」
「えっ?オレ。うれしいな。なに?相談?それともお願いかな?」
笑顔がまぶしすぎて後ずさるわたしを、中に入るように「早く、早く!」と拓梅先輩が手招きをする。
「しっ、失礼します」
「どうぞ、どうぞ」
長机の前に座るようにいすをひいてくれて、わたしが座ると、拓梅先輩もわたしの向かいに座る。にこにこと両手で頬杖をつきながらわたしを見ているからドキッとする。きっとみんなこんな無邪気な拓梅先輩だから好きなのかもと納得していると、拓梅先輩が口を開く。
「もしかしてきょーのこと?」
「えっ?」
「違うの?てっきり噂になっているからその相談なんじゃないかなって」
「それは……大丈夫です。気にしてません」
本当はすごく気にしているけど、そんなこと拓梅先輩にいったら話が複雑になりそうとわたしの危機回避センサーが訴えかけてきている。
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