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「そうなんだ。きょーは説教長いし、うるさいし、厳しいし怖いけど……」
また拓梅先輩からひどいいわれようをされていると思わず苦笑いする。
「花澄ちゃんみたいな子を構いたいんだよ」
「構いたい?」
「そう。いつか分かりづらい愛情表現していると痛い目に合うよっていっているのに『うるさい人ですね。放っておいてください』っていわれちゃうんだよ」
杏也先輩の口調をマネする拓梅先輩に思わずくすりと笑っちゃったけど……愛情表現!?聞き逃すところだった。
「そんな……愛情表現なんて……違いますよ」
恥ずかしさのあまりうつむいたけど、絶対耳まで真っ赤だ。高鳴っていく心臓をおさえるように深く息をはく。
「だってきょーがさ『あなたとあの人は本当に手がかかりますね。よく似ています。子供ですか』っていってた」
「それのどこが愛情表現なんですか?」
「だってきょーはオレのこと大好きなんだよ」
純粋無垢な顔でそんな言葉をいわれたらどう答えていいかわからず固まる。そんなわたしにお構いなしに拓梅先輩が言葉を続ける。
「花澄ちゃんがオレに似てるならきっときょーは花澄ちゃんのことも大好きだよ」
その言葉になぜか悲しくなってそれまで熱をおびていた気持ちがスッと冷えていくのがわかる。
「違いますよ。杏也先輩はやさしいから危なっかしいわたしを放っておけないだけです」
言葉にしてしまうと悲しみの波と一緒に想いまでもがこぼれだしてしまう。
「わたしを構いたいのだとしたらそれは杏也先輩が面倒見がよくてやさしいからです。不器用だから分かりづらいけど……わたしをいつでも助けてくれる。なのにわたしは何も返せない……変な噂がたって迷惑しかかけられない」
「そんなことないですよ」
入り口の方から杏也先輩の声がして思わず顔を上げると、いつもの無表情で感情の読めない顔で杏也先輩が扉の前に立っていた。
「いつからいたんですか?」
「少し前からです」
「じゃあ……」
こんなに恥ずかしいせりふを杏也先輩本人に聞かれちゃったんだ。どこから聞いていたの?頭の中が混乱して今にもショートしそうになる。
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