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「立ち聞きダメだよ」
「入るタイミングを逃しただけですよ」
「オレ、恥ずかしいこといっちゃったじゃんか」
「聞いてません」
「嘘だよ!感情がこもってないよ」
「うるさい人ですね」
ふたりのやり取りを聞いていてもわたしの心臓は落ち着いてくれない。居心地の悪さにいてもたってもいられなくて、立ち上がろうとするわたしの肩を杏也先輩が後ろから押して、わたしを座らせる。
「あなたがここにいるということは、相談があるのでは」
「は……い」
わたしの心臓は今にも爆発しそうなほどうるさいのに、杏也先輩はいつも通り冷静だ。それがなんだか悔しい。これじゃわたしだけが余裕をなくすほど杏也先輩を気にしているみたい。そんな考えをしてひとりでパニックになる。
「とりあえずふたりとも落ち着いてもらえますか」
あきれたように杏也先輩がため息つく。
「兄さんはブツブツうるさいです。黙ってください。あなたは顔がうるさいです。落ち着いてください」
「かっ、顔って……」
「失礼だな、きょーは」
「10数えるうちに黙ってください。いいですね!10、9……」
有無もいわさない杏也先輩の迫力に負けて真顔を作りながら黙る。
「やっと本題に入れますね。相談とは?」
本当は杏也先輩にまた迷惑をかけたくなかったから今回は拓梅先輩にアドバイスがもらえたらなんて軽い気持ちで生徒会室にきちゃったのに、結局は杏也先輩のやさしさに甘えたくなっちゃうから本当に困る。
「実は……演劇部のことです」
「あのポスターを見たという人は来ましたか?」
首を横に振りながらうなだれる。
「そうでしょうね。あなたのことです、今日の総合アクター部の放送を聞いて焦って生徒会に駆け込んだというところでしょうか」
「なんでわかるんですか?わたしの心読めるんですか?」
「あなたの考えくらい手に取るようにわかるんですよ。わかりやすいですからね」
「じゃあわたしが今、なにを考えているか当ててください」
むきになるわたしにあきれながらも、杏也先輩がわたしをじっと見てくるからドキリと音を立てる。
この感情は……杏也先輩のことが気になって仕方がないこの気持ちは……なんですか?教えてください。杏也先輩。
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