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無意識に考えた自分の言葉に恥ずかしくなって杏也先輩を見つめる視線を外して慌てる。
「……」
「あはは、花澄ちゃん顔赤いし慌ててる」
拓梅先輩にすらツッコまれるならこれからは顔に出さないようにしないと、と思いながらまだ鳴りやまない心臓をおさえる。
「わかりませんね。さて……今度こそ本題に行きましょう」
咳払いをして杏也先輩が目を細めながらわたしを見るから、小さく息をはいて気持ちを落ち着かせる。まただ。どうして悲しい気持ちになるんだろう。杏也先輩の気持ちに触れたいのに、届きそうなに届かない。わたしに壁をつくるような杏也先輩にわたしは悲しいって思っちゃうんだ。
あくまでもわたしは学校の後輩で、生徒会の副会長として演劇部を復活させたいわたしを助けてくれているだけ。なにを勘違いしていたのかな。急に恥ずかしくなって頭の中が冷静になっていく。
「演劇部の部員の集め方がわからなくて相談にきました」
大丈夫。今わたしは、冷静に話せている。杏也先輩を見返すために頑張るなんていっておきながら杏也先輩に頼るなんて都合がよすぎるよね。
「確かに総合アクター部という強力なライバルもいますし、部活紹介も終わってしまったから演劇部(仮)の存在をアピールするのは難しいでしょうね」
やっぱり杏也先輩だな。こうやってどんな相談にも真剣にのってくれる。だからつい頼りたくなっちゃうし、甘えちゃうんだよね。本当にずるい人だな。
「それなら他の部活みたいにビラ配りはどう?まずはみんなに演劇部を知ってもらわないとね」
「それでは弱いです」
「それなら他に方法があるの?」
あごに手を当て考え込んでいる杏也先輩にわたしと拓梅先輩の視線が集中する。
「放送にもあったように、今週末の総合アクター部の入部オーディションに望みがあるかもしれません」
「花澄ちゃんがオーディションを受けるとか?」
「いいえ。入部オーディションは体育館で公開オーディションという形をとります。総合アクター部の宣伝にもなりますし。誰でも観覧可能です。だからそれを利用します」
「それはつまり……」
「入部オーディションを受ける人材からスカウトが可能ということです。ただし入部オーディションに落ちてしまった人にしか声をかけられませんが、実力主義の総合アクター部です。それなりの実力者でも落とされる可能性があります」
「入部オーディションに落ちた人からいい人材をスカウトして演劇部に勧誘するってことですね」
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