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「そうなんだ。アイス先輩っていわれて嫌じゃないのかな?それに兄弟だからって比べられるのは嫌だって思わないかな」
にこにことしている拓梅先輩の隣にまったく表情をくずさない杏也先輩。対照的なふたりの雰囲気はまるで杏也先輩がわざと人を寄せ付けないような空気を出しているみたいに見えた。
「そこの人たち、急いでください。始まりますよ」
「はい」
考え事をしていたら突然杏也先輩に注意されて、驚きのあまり思わず大声で返事をしちゃったから恥ずかしい。
「びっくりした……へへっ。部活紹介楽しんでね」
「はい……ありがとう……ございます」
恥ずかしさを隠すようにうつ向くわたしに拓梅先輩が声をかけてくれたけど、杏也先輩の冷めた視線がわたしを刺している気がして顔を上げることができなかった。
「ちょっと、恥ずかしいじゃん」
「ごめんね。わたしも恥ずかしい」
赤くなっていく顔を膝に伏せながら体育館の床に座った。部活紹介が始まってもどきどきとうるさいくらいに心臓が音を立てる。恥ずかしさもまだ残っているけど、部活紹介の資料に載っていない演劇部がありますようにと願う気持ちと、もしもなかったらどうしょうという不安が混ざり合って期待と不安が交互に押し寄せる。
「次は新生総合アクター部です。お願いします」
進行をしている拓梅先輩に紹介されて総合アクター部の人たちが舞台にあがる。すると大きな歓声が起きて床から地響きがするから、地震のようにグラグラと体が揺れる。
「いちばん人気みたいだよ。入部オーディションまであるらしい」
小声で凪彩ちゃんが耳打ちをする。
「わたしたち総合アクター部は今年度より映像部を母体とし、アクター部、ボイスアクター部がひとつの組織に生まれ変わりました。他にも吹奏楽部、アニメーション部、ハンドメイド部と協力関係の元、ひとつの作品を作っていきます。わたし達と一緒に作品を作ってみませんか?入部希望者は入部オーディション申込用紙を総合アクター部まで取りに来てください」
芸術に力を入れている学校だけあって本格的な部だと思った。でもわたしはどうしてもあの日見た感動を伝えるために代々演劇部に伝わる演目を演劇部としてやりたいと思ってしまった。なのに最後まで演劇部の部活紹介が行われることはなかった。
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