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「その通りです」
演劇部復活の道筋が見えてきた気がして思わず声をあげる。
「うわーっ。うまくいく気がします」
「絶対いけるよ。さすがきょーだね」
「私のアドバイス通りにすれば完ぺきです。ただしあなた次第ですが」
「はい。絶対にいい人材を見つけてみせます。ありがとうございます」
『きっと演劇部を復活させて杏也先輩に恩返しをします』という言葉を飲み込んで心にしまった。杏也先輩を見返すって意気込んでいたのに、杏也先輩の的確なアドバイスに、結局はまた助けられちゃったし。それに言葉ではなくて行動でしめしたい。だからそれには今週末に控えた総合アクター部、入部オーディションまでにわたしが出来ることはすべてしようと思った。
「少しは気持ちが楽になりました。わたしが出来ることから始めてみます。まずは掃除の続きからしないと」
「オレ手伝うよ」
「生徒会のお仕事が大変だと思うので大丈夫です。ありがとうございます。もしひとりでダメなときは助けてください」
「わかった。頑張ってね」
「頑張ってください」
「はい。ありがとうございます。失礼します」
生徒会室に来る前とは比べものにならないくらい気持ちが軽くなった。でも拓梅先輩がいっていた言葉を思いだすと、頬が勝手に熱くなる。
「そういう意味じゃないよ……勘違いしたら……自分がつらくなっちゃうよ」
『きっときょーは花澄ちゃんのことも大好きだよ』拓梅先輩がくれた言葉を胸の奥にしまいこんで、二度とふたが開かないようにそっとかぎをかけた。
総合アクター部の入部オーディションの日まで、わたしに出来ることから始めて新入部員を迎える準備をした。まだ部活見学に来てくれる人はいないけど、部室だって自由に動き回れるほど広くなったし、物がなくなった。今まで演技の勉強をしたことがなかったから地元の劇団が主催している演技のワークショップに参加をしながら演技のレッスンも始めた。
「あとは、部員を待つだけ」
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