4.総合アクター部、入部オーディション

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総合アクター部、入部オーディション当日。朝から入部オーディションの話題でもちきりだった。ちょっとした学園のイベントのように学校の雰囲気も華やいでいる。わたしのクラスにも何人か入部オーディションを受ける子がいるみたいで、授業中でも台本を読み込んでいる人、スマホで曲を聞いている人、イメージトレーニングをするように目をつぶり集中している人がちらほらといる。 「なんだか異様な緊張感が漂っているから落ち着かないね」 ピリピリとした緊張感が所々から漂っているからわたしまで緊張してきた。 「花澄(かすみ)も観に行くんでしょ?」 「うん。部員探しと一緒に勉強が出来るかなって」 「実は吹奏楽部もオーディションの手伝いをするんだよね」 「だから朝からいろんな人によろしくっていわれてたんだね」 「わたしは直接審査には携わらないけど、吹奏楽部の部長が審査員のひとりだからね。そりゃ受かるためには利用できるものは利用したいよね」 今さらだけど、自分との熱量の違いに恥ずかしくなる。わたしが演劇部を復活させたいのはわたしの個人的な願いでもあるから。考えが甘いのかな?わたしが感じた感動をわたしも誰かに伝えたい。演劇部の伝統を引き継ぎ、伝えたいって思いだけではダメなのかな? 放課後になると、総合アクター部、入部オーディションを知らせる放送が流れる。それと同時に体育館に吸い込まれていく人の波に圧倒された。それだけ話題性も期待値も高いのかもしれない。どうにか舞台全体を見渡せそうな中央の席を確保して座る。立ち見がでるほどぎゅうぎゅうになる体育館の中はすでに人々の熱気で空気が薄くなっている。 わたしも緊張しながらもじっと前を見つめてその時を待っていると、歓声があがるから後ろを振り返る。そこには10人くらいで並んで体育館の中に入ってくる集団がいた。その中に拓梅(たくみ)先輩と杏也(きょうや)先輩がいて、『アイドル先輩』という歓声に拓梅先輩が手を振っている。
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