25人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
思いのほか話し合いはスムーズにいったみたいで、すぐに1次審査通過者が発表された。自分の番号を呼ばれて歓喜するもの、番号が呼ばれなくて涙を流すもの。わたしまでドキドキと緊張しながらも見守っていた。
「以上が1次通過者です。おめでとう」
入部オーディションを受けた半数も通過できなくて、体育館の中がどよめく。
「呼ばれなかった人もお疲れさまでした。2次審査をすぐに始めたいので、すみやかにお帰りください」
総合アクター部の部長の容赦ない言葉に、さらに体育館の中がどよめく。
「ちょっと待てよ」
1次審査を受けた男子生徒が声を荒げている。
「俺は子役出身だぞ。納得いかねーよ」
舞台から降りて総合アクター部の部長につめよるから、体育館の中がそうぜんとする。
「我々審査員の正当な評価だ」
物おじしないで総合アクター部の部長がいいかえすけど、男子生徒が審査員をした生徒を指差しながら鼻で笑う。
「そもそもこんな奴らに演技の何がわかるんだよ」
拓梅先輩に向けて人差し指を差すと、怒りに満ちた顔でにらんでいる。
「気持ちはわかるよ。でもまた頑張って入部オーディション受けてよ。応援しているから」
「おまえになにがわかるんだよ。へらへらしてるだけの生徒会長のくせに」
「それどういう意味だよ」
「落ち着いてください、兄さん」
今にもつかみかかりそうな拓梅先輩を杏也先輩がなだめる。体育館の中が一瞬にして緊張感に包まれて泣き出してしまう女子生徒までいた。
「兄さんに八つ当たりしないでください。あなた、かっこ悪いですよ」
「みんなに人気のお兄さんがいないと価値がない副会長さまがえらそうに説教なんてしないでくださいよ。そんなんだから副会長から引きずりおろしたい輩が現れるんですよ」
「うるさいな。おまえにきょーのなにがわかるんだよ」
「あなたは黙ってください。相手にしなくていいです。本当のことですから」
最初のコメントを投稿しよう!