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「想像つきませんね」
「そうだね」
思わずふたりで顔を見合わせて笑ってしまう。
「きょーの頭なら本当は進学校も余裕だったのにやりたいことがないからとか『私の役割は兄さんが周りに迷惑をかけないようにフォローすることです』とかいってさ。本当は自分の存在意義はオレのためにあるとか、そんなこと思っていたのかなって思うとちょっとショックだったな」
「確かにショックですよね」
わたしもなんでも完ぺきに出来てみんなから愛されるお姉ちゃんがいるから拓梅先輩の気持ちがよくわかる。だからこそみんなから愛される兄がいる杏也先輩の気持ちも理解できるかも。
なにかひとつでも自分の方が勝てるっていうなにかがないと自信ってもてないし、自分には勝てるものがないなんて思っちゃうと誇るものは自分の兄弟、姉妹しかいないって思い込んじゃうのかも。
本当は自分を大切にしたいのに自信がないから、おおげさなほど期待して、ほめたおして、やっぱり自分の兄弟、姉妹はすごいって優越感にひたることで、どうにか自分のもてる自信を保つことができるのかも。むなしくなることもあるし、どうして兄弟、姉妹なの?と理不尽さに怒りたくもなるけど、嫌いになれないし、いなくなったらきっとさみしいから結局は、兄弟で姉妹でよかったって思えちゃうんだよね。
「……きょーはきょーなんだから自分の好きなように生きてほしいな。でもきっときょーはオレをいちばんに考えちゃうかも。オレもしっかりしないときょーが自分を大切にしなきゃって気づけないよね」
「わたしもお役にたちたいです。なにかあったら全力でサポートします。なんでもいってください」
「うん。花澄ちゃんなら心強いな」
「っていってもわたしも杏也先輩に迷惑ばかりかけてるから、まずはわたしがやらなくてはいけないこと、演劇部をしっかり復活させたいです」
「花澄なら大丈夫だよ。頑張って」
「拓梅。迎えにきたよ」
後ろから女の人の声がするから振り向くと、そこには太陽の光を逆光に浴びながら大人っぽい女子生徒がわたし達に近づいてきていた。
「汐里。よかった~生徒会室に帰りづらかったんだ」
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