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バカみたいだ。わたしだけが杏也先輩を助けたい。助けることが出来るかもってなんで思っちゃったんだろう。本当は迷惑だったのかな?自信なんてなかったけど、杏也先輩ほど完ぺきではないけど、わたしがどうして救うことが出来るって思っちゃったんだろう。
わたしの知らない那砂先輩たちと汐里さんの絆がきっとある。わたしが入り込めるすきまがないほどに。
「……落ち込んでなんていられないよね」
それなら迷惑をかけないようにわたしは自分の力だけでしっかり演劇部を復活させる。それだけを考えよう。
部室に戻ると、ノートにメモした内容を確認する。今の演劇部復活の目標は部員集めと学園祭での演目披露。だから総合アクター部の入部オーディションの1次審査で気になった演技をした人の名前を配役ごとにメモしていた。いくつかの名前を交互に見ながら演技を思い返す。同じ1年生で何人か名前をメモした中で残念ながら1次審査に落ちた人の名前が3人ある。しかもそれぞれの配役にひとりづつ。だからきっとこれを逃したらどんどん時間だけが過ぎて最悪演劇部をあきらめないといけないかもしれない。みんなわたしなんかより演技の技術がしっかり身に付いている。だから即戦力になりそうだ。明日にでも3人に声をかけようと決意する。
昼休みの時間を利用して3人に交渉しようとまずは台本の原本をコピーしに事務室へむかう。やっぱり台本があればイメージしやすいし、演劇部でこんなことをしたいという資料になると思うから。事務室へ向かいながらも台本に目を通していると、向かいから杏也先輩が歩いてくるから思わず台本で顔を隠す。それでも無視することはできないから一応すれ違うときにあいさつだけはした。
「こっ、こんにちは」
慌てて通り過ぎようとするわたしに振り返りながら杏也先輩が声をかけてくる。
「なんですか?なにかあったんですか」
「えっ、いっいいえ。なにも」
台本で顔を隠したまま立ち止まるとおそるおそる振り返る。
「なんですか、それは?」
「なんのことでしょうか」
台本を少し下げて隠していた目元だけ出すと、杏也先輩を見上げた。相変わらずあきれたように目を細めてわたしを見ている。
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