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「元気出しなって」
部活紹介が終わって教室へと戻る廊下でもう何度目かわからないため息をつく。そんなわたしを凪彩ちゃんがなぐさめてくれている。
「凪彩ちゃんはいいな。吹奏楽部本格的だったし、演奏は鳥肌立ったし。これからが楽しみだね」
「いやみに聞こえるんだけど」
「違うよ。うらやましいなとは思っちゃったけど」
「あきらめきれないんでしょ?」
少し頭の中で考えてみたけど、やっぱりわたしはあきらめきれないのかもしれないと思ってうなずいた。
「それならいいこと教えてあげる」
得意気な顔でにやっと笑うと、凪彩ちゃんが人差し指をビシッと効果音がしそうな勢いである方向に向けるから、人差し指の先に顔を向ける。
「うちの学校は生徒会が主導権をすべて握っているの」
凪彩ちゃんの人差し指の先にいる人物は体育館にまだ残る拓梅先輩と杏也先輩。
「ということは……」
「と、いうことは?」
「生徒会に演劇部を作りたいってアピールすればいいのよ」
「アピール?」
「そう。生徒会に認められれば演劇部を作ることができるかもよ」
「認められるって具体的になにをすればいいかな?」
演技経験がないわたしがなにをして生徒会にアピールすればいいか思いつかない。やる気はあるけどやる気をアピールするにはどんな方法がいいのかと頭をぐるぐるとめぐらせるけど、なにも思いつかない。
「やっぱりまずは先輩たちの性格を把握して交渉を有利にすることじゃない」
「それはつまり先輩たちの性格を分析するってこと?」
「それが近道じゃない。それには観察がいちばんよ!拓梅先輩は案外提案にのってくれそうだけど」
「問題は杏也先輩ってこと?」
「アイス先輩だからね」
生徒会を納得させるには確かに杏也先輩がいちばんの難問な気がする。自分の気持ちをアピールするにはまずは会長、副会長を攻略する必要があるのかもしれない。
「そうだね。出来ることから始めてみる」
「応援しているから」
「ありがとう。頑張るね」
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