5.すれ違う気持ちと芽生え始めた気持ち

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「演劇部を作るのはアイス先輩を困らせる作戦だって。副会長を引きずりおろすための主犯格だって有名だよ」 「えっ?そんな噂があるなんて知らなかった」 圧倒的な声量と聞き取りやすい言葉は舞台映えしそうでどんな役でもこなせそうな草野さんが噂の内容を教えてくれた。 「だから演劇部に勧誘されてもその……」 「迷惑なんでごめんなさい」 「うちらは巻き込まれたくないだけだから。わかってくれる?」 当然すんなり入部をしょうだくしてくれるとは思わなかったけど、まさかそんな噂があって断られるとは思わなかった。 「誤解は舞台上で解決してみせます。きっと舞台を成功させます。わたしには3人の演技力が必要なんです。だから力を貸してください」 頭を深く下げるわたしの頭上にため息が落ちてくる。 「お願いします。学園祭で上演予定の台本を持ってきました。配役を勝手に決めちゃったけど、きっとみなさんにぴったりな役だと思います。だから考えてくれませんか」 顔を上げてひとりひとりに台本を配ると、再び頭を下げて教室を後にする。 まさかわたしが杏也(きょうや)先輩を副会長から引きずりおろそうとする主犯格だと噂されているなんて知らなかった。だから汐里(しおり)先輩もわたしに敵か味方か聞いてきたんだ。それなら理解できる。 「ぜんぜん違うのに」 教室に戻ってからもため息ばかりつくわたしを心配して凪彩(なぎさ)ちゃんがワケを聞いてくれたから、今まであったすべての話をした。 「そっか。花澄(かすみ)の耳にも入っちゃったんだね」 「凪彩ちゃんも知ってたの?」 「なんとなくだけどね。今じゃ花澄は生徒会を変えてくれそうな革命児扱いだよ」 「そんな……違うのに」 「わたしは違うってわかるよ。でも周りはそう見ないみたい」 きっとわたしの噂は杏也先輩の耳にも入っているはず。それならわたしと関わることは杏也先輩にとってプラスにはならない。それなのにいっぱい助けてくれてる。きっと噂なんてくだらないと杏也先輩は気にしていないだろうけど、わたしと話しているところを周りの人はどんな目で見るんだろう。だから廊下であった時に心配して声をかけてくれたのかな?だとしたらわたしが噂を気にして杏也先輩をさけていると思われてもおかしくない。噂を知らなかったとはいえ、誤解される態度をとっちゃったかも。
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