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「また杏也先輩に迷惑かけちゃった」
机に突っ伏してため息をつくわたしを凪彩ちゃんがなぐさめてくれる。
「噂なんてそのうちなくなるよ」
「なんで……なんでこうなっちゃうの」
なんですべてがうまくいかないんだろう。自分の気持ちや考えとまったく反対のことばかり起きて、もうどうしたらいいかわからない。
それから毎日のように土田さん、水川さん、草野さんの元に通って説得をしていた。
「また来たんだ」
「しつこくてごめんね」
「むしろ尊敬します」
「わたしあきらめ悪いから」
「それは長所でもあり短所だからね」
「はい。よくわかってます」
あきれたようにため息をつく3人に演目のクライマックスの話を振る。
「少女は最後『夢、希望』という感情を知るの。でもそのせりふは決められてなくて代々演じてきた先輩たちがその時代に合わせて言葉を考えていたみたい」
「おもしろい試みだね」
「そう思う?自然災害が起きた年の先輩たちの舞台では少女の願いは自然と人間が共存できる未来を願うってせりふにしたみたい」
「それなら今年の演劇部のせりふは人の噂も七十五日とか」
固まるわたしを見て3人がくすりと笑う。
「鈴音さんいったよね。伝えたい思いがあるからわたしも演じてみたいって」
「うん。いった」
「あたし達から見ても物騒なこと考えそうに見えないから噂は誤解なんだよね」
「そう。むしろ杏也先輩にはたくさん助けてもらってるから感謝しているの」
「それなら舞台上でしめせばいいと思うよ」
「それって」
驚きのあまり目を見開いたまま3人を見ると、笑顔でうなずいてくれた。
「よろしくお願いします。部長」
「水川さん」
「実は入部オーディションのとき、アイス先輩の言葉がカッコいいなって思ってた。だからうちも総合アクター部を落とされたのは悔しいけど、演技で、舞台で見返したい」
「草野さん」
「みんな同じ気持ちだから。学園祭まで頑張ろう」
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