5.すれ違う気持ちと芽生え始めた気持ち

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「土田さん」 事前に渡していた演劇部の入部届けを差し出されて受け取る。 「本当にありがとう」 「あたし達だって伝えたいことがあるから演じたい。それは一緒だから。その代わり演技初心者な部長を甘やかさないからね」 「迷惑かけないように頑張ります」 「しっかり指導するからついてきてね。部長」 「ありがとう。よろしくお願いします」 「でもあとひとりだよね?」 確かに4人いれば舞台は成立する。それでも部活動として認めてもらうには5人必要だからあとひとり。 「たぶん役をもらえないなら入部したがらないかも」 「来年の総合アクター部の入部オーディションに向けて動き出している人もいるしね」 「誰かいないの?」 「ひとりいるから聞いてみる。みんなは今日の放課後、旧地域相談室にきてください。全員の入部届けを生徒会に出したらわたしもいくから」 「わかった」 「じゃあ、放課後」 全員分の入部届けを握りしめたまま教室に戻る。 「おかえり。どうだった?」 凪彩(なぎさ)ちゃんに受け取ったばかりの入部届けを見せる。 「すごいじゃん。やったね」 「ありがとう。それで相談が……」 「はいこれ、プレゼント」 渡されたのは凪彩ちゃんの入部届けだった。 「どうして?」 「だって花澄(かすみ)、3人に声かけるのに必死すぎてひとり忘れてんだもん。一応名前貸しだよ。わたしには吹奏楽部があるから」 「ありがとう。凪彩ちゃん」 わたしの入部届けと合わせてこれで5枚になった。やっと生徒会から出された最初の条件がクリアした。あとは学園祭の舞台を成功させること。今から稽古を始めても時間はたっぷりある。何よりたくさん稽古ができる夏休みだってある。やっと学園祭に向けて道筋が見えてきた気がする。 入部届けを握りしめながら生徒会室へ向かう。最近はさけているわけではないけど、杏也(きょうや)先輩と顔を合わせることがほとんどない。身だしなみ月間も終わって正門の前に毎朝立っていた那砂(なずな)先輩たちも今はいない。だから顔を合わせる理由もなくなっちゃったから那砂先輩たちに会うのは久々だ。どことなく落ち着かないし、緊張する。
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