6.アイス先輩はわたしのストーカーですか?

1/11
前へ
/126ページ
次へ

6.アイス先輩はわたしのストーカーですか?

「ということで、正式に演劇部を復活させることができました。本当にありがとうございます」 拍手をしてくれる演劇部のみんなを見渡すと、胸がじんとして温かくなる。 「顧問の先生は誰なの?」 「茎田(くきた)先生です」 「茎田先生って総合アクター部の顧問の?」 「その通りです。毎日頼みこみにいったら名前だけ貸してやるけど、一切面倒をみないっていわれちゃったけど」 「そりゃそうだよね」 「総合アクター部の活動だけで手一杯だろうしね」 茎田先生の名前を出したら一瞬空気が明るくなったのに、すぐにどんよりとした空気に変わる。 「悔しいよね」 「悔しい」 「見返すしかないよね」 「部長」 「はっ、はい」 一斉にわたしを見るから迫力に負けて声がうわずる。 「学園祭に向けていちばん努力をしないといけないのは部長だから」 「はい。よく存じております」 「だからなんでもあたし達に相談して」 「ちゃんと頼ってよね」 「みなさん……ありがとうございます」 入部オーディションを受けている時のみんなの演技をしっかり見ていた。だから役にもぴったりだし、物語がしっかりとまとまると信じている。だから後はわたし次第だって少しプレッシャーもあるけど、自分から演劇部を作りたい、復活させたいとみんなを巻き込んだから責任だってある。ひとりでなんでも抱えようとしちゃったけど、きっとみんながいれば一緒に乗り越えられるよね。 「頼りない部長ですがよろしくお願いします」 「明日から基礎的なレッスンから始めよう」 「はい」 発声練習に基礎体力作りにと、想像よりも体力を使うし、練習メニューも運動部のようにハードなものばかりで、みんなについていくのがやっとだった。 「きゅっ、休憩しませんか」 「そうだね」 床に座り込んで呼吸を整える。その間もみんなは立ったまま休憩をしないで体を動かしている。 「足を引っ張ってごめんなさい」
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加