6.アイス先輩はわたしのストーカーですか?

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「初めてにしてはちゃんとついてきてるから大丈夫」 「でも長時間の舞台に立つなら体力もつけないとね」 「部長は主役だからずっと舞台にいなくてはいけない。せりふだけじゃなくて動きもせりふに合わせて必要になるからしっかりバテない体力をつけないとね」 汗を拭いながらみんなの言葉に耳をかたむける。 「明日から走りこみも増やそう」 「走りこみ……」 「そういえば今日の昼休みに部活動合同学園祭会議が放課後にあるって放送流れてたけど……」 「あっ!?」 「まさか」 「忘れてた……」 「しっかりしてくださいね。部長」 「ごめんなさい」 時計を見ると、会議開始時間をとっくに過ぎていた。制服に着替える時間がないから、体操着のままドアに手をかけた時、最悪な展開になる。 『演劇部の部長、至急生徒会会議室に来なさい』 杏也(きょうや)先輩の声でわたしを呼び出す放送が流れる。 「アイス先輩怒ってるね」 「いっ、いってきます」 慌てて廊下を駆け出す。練習についていくのが精一杯で、かんじんの大切な会議を忘れていたなんて。きっと杏也先輩にあきれられる。 生徒会会議室の前につくと、呼吸を整えてから扉をノックして入る。 「演劇部です。遅れてすみませんでした」 静まり返る空気に気まずさのあまり頭を上げられないでいると、杏也先輩があきれたようにため息をつく。 「まさか会議を忘れたわけではないですよね」 「……忘れていました」 「あなたひとりがこないがために時間通り集まったみなさんが待つはめになるんですよ。なのに忘れていたなんて無責任だと思いませんか」 「本当にすみませんでした」 「もういいよ。ねぇ、きょー」 「よくないですよ。みなさん練習をする時間をさいてまで集まっているんです。もう少し自覚と責任を持ってください」 「……はい」 「時間がもったいないから早く進めよう。花澄(かすみ)ちゃんも早く座って」 「はい」 あいている席につくけど、周りからの視線にたえられなくてうつむく。
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