6.アイス先輩はわたしのストーカーですか?

4/11
前へ
/126ページ
次へ
早めに終わらせて学園祭を楽しみたい人は初日の午前、最初の上演スケジュールを狙っている。逆にみんなが絶対に選びたくない上演スケジュールは最終日の昼公演。総合アクター部の前座みたいでいやだという意見が多かった。結果的に初日の午前に希望を出す部が集中した。 「みんなわかりやすいね。自分たちがオープニングセレモニーをつとめたいの?」 「最終日午前中希望の吹奏楽部は他に希望者がいないから決定になります」 拓梅(たくみ)先輩の言葉に周りがどよめく。 「全国制覇もした吹奏楽部と人気の総合アクター部に挟まれた昼公演なんて罰ゲームだな」 確かに実力者に挟まれて比べられそうだし、やりづらそうだな。まだわたしは、希望の時間帯を決めかねていた。出そろった希望を見る限り、初日の昼公演が出来たばかりの演劇部にはぴったりな時間かもしれないと思って、配られた希望票の初日の昼公演の欄に丸をした。 「演劇部はまだ提出してないけど……」 拓梅先輩の言葉に一斉にわたしに視線が集中する。 「あの……今から……」 「そうだ。演劇部が最終日の昼公演ってどうかな?」 阿左美(あざみ)先輩の提案に一瞬どよめくも、すぐに拍手がわく。みないちばん上演したくない時間を押し付けられてほっとしたような顔をしている。 「待ってください。初日の昼公演で希望を出そうと思っています。それにプレッシャーです」 正直に答えると、それまで歓喜していた空気が一瞬にして冷めていく。いたたまれなくなってうつむいていると、静けさを打ち消したのは阿左美先輩だった。 「演劇部は出来たばかりでしょ?これからのためにもたくさんの人に演劇部の存在を知ってもらうにはいい機会だと思うんだ」 「いい機会ですか?」 「そうだよ。吹奏楽部も総合アクター部もきっと体育館に入りきれないほど人であふれる。だからみんないい席を取るために、キープするためにずっと体育館から動かないと思うんだ。だからその人たちの目にも触れることができるいい機会になると思うんだ。いい意味で考えると人気を利用させてもらってついでに自分たちの公演もみてもらえる。演劇部にとってはいいチャンスだと思うんだけど、どうかな?」
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加