6.アイス先輩はわたしのストーカーですか?

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「……お疲れさま……です」 「お疲れさま」 「お疲れさまです」 チラッとだけわたしを見る汐里(しおり)先輩に対して杏也(きょうや)先輩は目も合わせてくれない。もしかしてまだ怒っているのかな?だからあきれてるのかも。 「今日は……本当にすみませんでした」 逃げるように会議室を出ると、ちょうど入り口で誰かと話していた阿左美(あざみ)先輩に腕をつかまれる。 「大丈夫?」 「だっ……大丈夫です。お疲れさまでした」 「待って」 つかまれた腕を引っ張られて顔のすぐ近くに阿左美先輩の顔があるから、思わず顔を背ける。 「今にも泣きそうな子を僕は放っておけないよ」 「そんなこと……」 「僕でよければ聞かせてよ。やっぱり無理させちゃったかな?あの場の空気を考えてうなずいてくれたんだよね。キミはやさしい子だね」 「いいえ、大丈夫です。演劇部のこと考えてくれてうれしかったです。ありがとうございました」 「それならよかった。嫌われちゃったかなって」 わたしの腕をつかむ手がゆるめられたから、慌てて腕をひっこめる。 「そんな……こと」 慌てて首を振って横を向くと、生徒会の人がわたしたちをじっと見ている。もちろん杏也先輩も。わたしがあいさつをした時は、顔を上げてくれなかったのに、こんな場面を見られたと思うと、恥ずかしくてこの場から早く逃げたいという気持ちになる。 「あの……しっ、失礼します」 慌てて駆け出して部室へと戻る。なんでかな……こんな時でも阿左美先輩がくれた言葉を本当は杏也先輩から聞きたかったって思っちゃう。本当は困らせたくないのに誰よりも心配してくれて、めったに聞くことができないやさしい言葉がほしいって思っちゃうのはわたしが……杏也先輩を……。 お願い。学園祭が終わるまでは……自分の気持ちに見て見ぬふりさせて。 「わたしたち、演劇部の上演スケジュールが決まりました。最終日の昼公演です」 みんなに1部づつタイムスケジュールの紙を配りながらかたずをのんで見守る。 「あたしたちは吹奏楽部と総合アクター部の間」 「本当にごめんなさい。わたしが勝手に決めました」 「なんでこの枠にしたの?」
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