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「人気のある吹奏楽部と総合アクター部を観にきたお客さんの前で披露できるのは、演劇部にとって存在をアピールするチャンスだと思って」
みんなが眉根を寄せて難しい顔をして黙りこんでいる。納得してもらうまで説得してみようとみんなの顔色をうかがいながら言葉を探していると、草野さんがふっと笑う。
「つまり利用できるものは利用する。ってことでしょ?」
「生徒会から出された演劇部復活のもうひとつの条件が学園祭での成功。だから例えわたしたちを観にきたお客さんじゃなかったとしても少しでも楽しんでもらえたらって思ってる。それが結果的に演劇部の存在を知るきっかけになってくれたらうれしいし」
「そうだね。うちらだけじゃお客さんを集められないだろうし、うちら目当てじゃないにしても席をうめてくれるのはありがたいよね」
「下手なもの見せられないって自分にプレッシャーをかけることで頑張れるかもしれないよね」
みんなが口々にいってくれる言葉は前向きで、わたしもほっとした。
「よし!学園祭に向けてがんばろう」
「手を出して『おーっ!』とかやっちゃう」
「やろう」
右手を前に出して円陣を組むと、みんなで顔を見合わせた。
「ここはやっぱり部長じゃない」
「かけ声お願いします」
「わかりました。えっと……わたしもみんなに置いていかれないように、えっと……精一杯練習頑張ります。だから……そう。学園祭まで気持ちをひとつにして頑張りましょう。せーの……」
「おーう!」と4人の声をハモらせながら天高く手のひらをかざす。
「ちょっとグダグタでしまらなかったけど、一応気持ちは受け取ったから」
「そうだね。頑張ろう、部長」
「できることからやっていこう。まずは読み合わせして物語の世界観をつかまないとね」
ようやく学園祭に向けて、演劇部が動き出した。
「最初は心配したけど、なんとかまとまったみたいだね」
「みんな経験者だからたくさん助けられてるんだ」
次の授業の教室に移動しながら凪彩ちゃんと学園祭の話しになる。
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