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「まさかうちの部と総合アクター部に挟まれて演劇部が上演するなんてね。正直つらくない?」
「確かにプレッシャーはあるよ。わたしにとって初めての舞台だし。でも楽しもうってみんながいってくれたから今は楽しみの方が大きいかな」
「ここまでようやく来たんだもんね。花澄なら大丈夫か」
「凪彩ちゃんにほめられるなんて」
おおげさに泣いたふりをしていると、凪彩ちゃんがわたしのひじをつかんで揺するから顔を上げると、そこには無表情のまま立ちつくす杏也先輩がいた。
「杏也先輩どうしたのかな?杏也先輩」
名前を呼ぶわたしの声が聞こえていないのか、杏也先輩がきびすを返してその場から立ち去ってしまった。
「聞こえてなかったかな?」
「いやいや、あれはあきらかに花澄をさけているよ。またなにかやらかしたの?」
「やらかした前提なの?でもしらない間になにかやらかしたのかな?そんなことないよ。だって杏也先輩とぜんぜん会話してないし」
「ならあの態度はなに?怒っているようにも見えたけど」
「怒らせた覚えもないし、やらかした覚えもないから気のせいだよ」
自分にいい聞かせるようなせりふをはいたけど、まったく身に覚えがないからかんちがいだと思いたいけど、あきらかに杏也先輩の態度がおかしかった。
「……聞いてますか?」
「部長?」
ぼーっとするわたしを不思議そうに演劇部のみんなが見ている。
「ごっ、ごめんね」
「心配事でもあるの?」
「むしろ心配しかないよ。しっかりしてよ、部長」
「ごめんなさい。最初から話し合いましょう」
なぜか今日1日だけで何度も杏也先輩とはちあわせをした。そのほとんどが顔を背けられて逃げるように立ち去られてしまったけど。まるでわたしをさけたいのに、なぜか何度も偶然はちあわせしてしまい、どうようしているようにも見えた。わたしが原因というよりも、今日の杏也先輩はやっぱりどこか様子がおかしい。
「……疲れているのかな?」
「いい加減集中してくれないとこっちが疲れるんだけど」
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